シャイアンまではシアトル、デンバーで二回乗り換えて向う。ところがシアトルからデンバーへの乗り継ぎ便が遅れること4時間、シャイアンに着いたのは最終便で夜10時半、不安だったトランクが奇跡的にも遅れに合せて一緒に着いたのは幸運だった。飛行機も空港も小さく、タラップを下りたら隣で荷物も下ろしていて、その中にわれわれのトランクを見たときは小躍りした。ハーツのレンタカー窓口で、ホテルの行きかたを何度も聞いていると、「あなたが最後の客なので、5分待ってもらえれば、店を閉めて案内してあげる」という。これ幸い、ハーツのおばちゃんの先導で、深夜の”大いなる西部”第一夜のホテルに、日本から24時間かけて無事到着した。
翌朝、シャイアンのOld West
Museumに行き、開拓の歴史とロデオのビデオを見て、これからの旅の知識を仕入れた。売店でワイオミングの車のプレートがないかと聞くと、フリーマーケットの場所を地図に親切に書き入れてくれた。ここで前から欲しいと思っていたロデオ図案のワイオミング州のプレートを手に入れた。このあと、スコッツブラフでネブラスカ、オレゴン、モンタナなどのプレートも仕入れた。今は、山荘の書斎の壁を飾っている。ちなみにアメリカでは、ライセンスプレートと言い、ナンバープレートでは通じなかった。ハーツのオバちゃんも、博物館のオバちゃんもとても親切だった。アメリカの田舎のホスピタリティに接し、気持ちよい旅のスタートになった。
スコッツブラフ最後の日は、妻が関心を持っていた四人の大統領の顔が岩山に彫られているサウスダコタ州のラッシュモアマウンテンに出かけ、夕方6時までには、バッファローステーキが出る野外パーティに戻ってこようという強行軍だ。
約600k、大阪までの距離に匹敵する。朝早く、スコッツブラフから北へ向った途端、家一軒ない大荒野の一本道に出た。行き交う車もまばら、ひたすら制限速度をちょっと越す程度で走る。以前、こんな誰も走っていないワイオミングの田舎道でスピード違反で捕まったことがあるので、要注意なのだ。
あのときは今村さんがいて、お巡りさんに「Can you close the
eye?」と頼んでくれたがダメだった。そして罰金を払ったら、お巡りさんが「Thank you very
much!」と言ったので、私は反射的に「You are
welcome」なんて言ってしまい、あとで「何がWelcomeだ」と落ち込んだことなどが思い出される。
約4時間かけて着いたラッシュモアマウンテンの周りの変貌には驚いた。20年前に来たときは、ふつうの平地の駐車場に入れて、展望も平地からだったのに、今は岩山に4階建てくらいの駐車場ができ、その先、大統領の顔の真下に甲子園のアルプス席のような観客席がある。バックスクリーンの上部に大統領の顔がある感じだ。あの時の夜、真っ暗闇の中で偉大な大統領と岩山彫りの映画が上映され、終了直後、パッとライトアップされたと同時に、アメリカ国歌が流れ、全員総立ちで合唱するという感動的というか異様な光景に出くわしたことを忘れない。
帰りも4時間かけスコッツブラフに帰って、大会最後のイベント、野外劇場に参加した。小さい子から年寄りまで何十人もが総出で、開拓の道を、みんなが助け合いながら歩き、オレゴンに到着、喜びの歌を合唱する姿は、ラッシュモアマウンテンの国歌よりも感動した。この日の野外劇場を包んだ夕暮れもまたすばらしかった。久しぶりのオレゴントレイル協会のイベント参加、充実したネブラスカの旅となった。
大いなる西部の旅も今日で終わり、明日はフェニックスから日本へ飛び立つ。
モニュメントバレー近く、カイアンタの宿を7時過ぎに出た。今日はフェニックスまで600キロのドライブだ。赤茶けたアリゾナの砂漠をグランドキャニオンに向う。東ゲートから入った。入場料25ドルは今まででいちばん高い。さすがは"グラキャン"だ。最初のリムからの眺めに妻は感嘆。さすがグラキャン、やっぱりグラキャンというところか。はるか下にコロラド川の流れが見える。妻は若いときこの川下りツァーに申込み、催行人数が集まらず、中止になったとか、「行かなくてよかった」と実物を見てホッとしていた。すこしドルの現金が足らなくなってきたので、公園にあるメリルリンチで両替した。このときの行員は一万円を見たのは初めてらしく、お金の百科事典のような本で一生懸命チェックしていた。そのあと、先輩のところに行って、再確認、やっと両替ができた。現金の円をここで替える人はあまりいないようだ。
フェニックスの町には夕方7時ごろ入った。これまでの田舎町とはちがい、大都会、はじめて4車線の高速道路に入り、夕方のラッシュもあり、大変な車の流れになった。行く先のホテルへのインターがわからず、ラッシュの中で焦った。翌朝の空港のRent
a car returnの場所にも驚いた。空港ターミナル近くになったら、Rent a car
returnは空港の外を指している。いくつかの信号を廻りまわって、空港からかなり離れたとてつもなく大きいレンタカー専用のビル駐車場に入っていった。さすがアメリカ。車の国である。大いなる西部で廻った州はワイオミング、ネブラスカ、サウスダコタ、コロラド、ニューメキシコ、ユタ、アリゾナの7州。いずれも思いで深い所であった。